【知らないと50万円の罰金!?】フロン排出抑制法を初心者向けに徹底解説

冷媒ガス

業務用エアコンや冷凍冷蔵機器を使用している事業者の皆さん、「フロン排出抑制法」をご存知でしょうか?この法律を知らずに違反すると、最大50万円の罰金が即座に科される可能性があります。本記事では、フロン排出抑制法の基礎知識から、事業者が守るべき義務、罰則の内容まで、初心者の方にもわかりやすく解説します。


フロン排出抑制法とは?なぜこの法律が必要なのか

フロン類が環境に与える深刻な影響

フロン類は、業務用エアコンや冷凍冷蔵機器の冷媒として広く使用されている化学物質です。しかし、フロン類には以下のような深刻な環境問題があります。

1. オゾン層の破壊

特定フロン(CFC、HCFC)は成層圏のオゾン層を破壊し、有害な紫外線が地表に届きやすくなります。

2. 地球温暖化の加速

代替フロン(HFC)はオゾン層を破壊しませんが、二酸化炭素の数十倍から1万倍以上もの温室効果があります。つまり、わずかな量のフロン漏洩でも、地球温暖化に大きく影響します。

3. 異常気象の一因

近年のゲリラ豪雨や猛暑などの異常気象の要因の一つとして、フロン類による地球温暖化が指摘されています。


対象となる機器と事業者

第一種特定製品とは?

フロン排出抑制法の対象となる機器を「第一種特定製品」といいます。具体的には以下のような業務用機器が該当します。

対象機器の例

  • 業務用エアコン(店舗、オフィス、工場などで使用)
  • 業務用冷凍冷蔵機器(スーパーの冷蔵ショーケース、業務用冷凍庫など)
  • 業務用冷水機
  • 自動販売機(内蔵の冷凍・冷蔵ユニット)
  • ビル用マルチエアコン

対象外の機器

  • 家庭用エアコン・冷蔵庫(家電リサイクル法が適用)
  • カーエアコン(自動車リサイクル法が適用)

重要なのは、「業務用」かどうかは製造メーカーの分類で決まるという点です。たとえ家庭で使用していても、メーカーが業務用として製造した機器であれば対象となります。不明な場合は、機器の銘板や製造メーカーに確認しましょう。

管理者とは誰のこと?

原則として、第一種特定製品の所有者が管理者となります。ただし、リース契約などで「保守・修繕の責任」が使用者側にある場合は、使用者が管理者となるケースもあります。契約書の内容を確認してください。


事業者が守るべき3つの義務

フロン排出抑制法では、機器の管理者に対して大きく分けて3つの義務を課しています。

定期的な点検の実施

機器からのフロン漏洩を早期発見するため、定期的な点検が義務付けられています。

簡易点検(3ヶ月に1回以上)

すべての第一種特定製品について、3ヶ月に1回以上の頻度で簡易点検を実施する必要があります。

点検内容

  • 機器の異常な振動、異音、油漏れの確認
  • 冷え方や温まり方の異常チェック
  • 機器周辺の霜付き、腐食、損傷の有無
定期点検(専門家による点検)

一定規模以上の機器については、専門知識を持つ者による詳細な定期点検が必要です。

点検頻度

  • 冷凍冷蔵機器(7.5kW以上):1年に1回以上
  • エアコン(7.5kW以上50kW未満):3年に1回以上
  • エアコン(50kW以上):1年に1回以上

2022年8月からの新制度:簡易点検の自動化 常時監視システムを使用すれば、簡易点検の代替が可能になりました。ただし、以下の要件を満たす必要があります。

  • 1日1回以上、圧力や温度などを計測
  • 1日1回以上、漏洩の有無を自動診断
  • 異常時のアラート機能

漏洩時の適切な対応

フロン類の漏洩が確認された場合、速やかに対応しなければなりません。

対応手順

  1. 漏洩箇所の特定と修理
  2. フロン類の補充(必要に応じて)
  3. 点検記録簿への記録

フロン類をみだりに大気中に放出することは厳禁です。違反すると1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。

算定漏洩量の報告(大規模事業者)

年間のフロン類漏洩量が1,000t-CO2以上となった事業者は、毎年度、漏洩量を国に報告する義務があります。報告しなかった場合や虚偽の報告をした場合、10万円以下の過料が科せられます。


機器廃棄時の義務と強化された規制

2020年4月の法改正で、機器廃棄時の規制が大幅に強化されました。違反すると行政指導を経ずに即座に罰金が科されるようになっています。

廃棄時の流れと各主体の義務

1. 機器の管理者(廃棄等実施者)の義務

  • フロン類の回収を都道府県知事登録の「第一種フロン類充塡回収業者」に依頼
  • 行程管理票(引取証明書)の交付を受け、フロン回収が完了したことを確認
  • 行程管理票を3年間保存
  • 廃棄物・リサイクル業者へ機器を引き渡す際、引取証明書の写しを交付

2. 建設・解体業者の義務

  • 建物解体時、業務用エアコン等の有無を事前に確認
  • 確認結果を書面で発注者に説明
  • 発注者がフロン回収を依頼したことを確認(工事を受託した場合)

3. 廃棄物・リサイクル業者の義務

  • フロン回収済みを証明する引取証明書の写しを確認
  • 確認できない機器の引取りは禁止

行程管理票(引取証明書)とは?

フロン類が適切に回収されたことを証明する重要な書類です。未記載、虚偽記載、保存義務違反があった場合、30万円以下の罰金が科せられます。


罰則一覧

フロン排出抑制法の違反には、以下のような罰則が定められています。

違反内容罰則罰則の種類
フロン類をみだりに大気放出1年以下の懲役または50万円以下の罰金直接罰
フロン回収せずに機器を廃棄50万円以下の罰金直接罰
引取証明書未交付・未確認での機器引取り50万円以下の罰金直接罰
都道府県知事の命令違反50万円以下の罰金間接罰
行程管理票の未記載・虚偽記載・保存違反30万円以下の罰金直接罰
算定漏洩量の未報告・虚偽報告10万円以下の過料

直接罰とは?

2020年4月から導入された制度で、違反が確認された場合、行政指導や勧告を経ることなく、即座に刑事罰(罰金)が科されます。これまでの「指導→勧告→命令→罰則」という4段階のプロセスが、一気に最終段階へ進むため、注意が必要です。


国際的な動きとキガリ改正

モントリオール議定書キガリ改正とは?

2016年10月、ルワンダのキガリで開催された会議で、モントリオール議定書が改正されました。これにより、代替フロン(HFC)についても、生産量・消費量の削減義務が国際的に課されることになりました。

日本は2018年6月にオゾン層保護法を改正し、代替フロンの製造・輸入を規制しています。

削減目標

  • 2025年の基準限度は達成見込み
  • 2029年以降はさらに厳しい基準(2,145万t-CO2)
  • 2040年度目標:2013年度比で72%削減(地球温暖化対策計画)

指定製品制度による低GWP化の推進

フロン排出抑制法では、「指定製品制度」により、メーカーに対して環境影響度(GWP)の低い製品の開発・販売を促しています。

主な指定製品と目標:

  • 家庭用エアコン:GWP 750(目標年度2018年)
  • 業務用エアコン:製品区分ごとに目標設定
  • ビル用マルチエアコン:2024年10月に新たに指定製品に追加

違反事例:実際に摘発された企業も

2021年11月、東京都は改正フロン排出抑制法違反で、全国初の検挙事例を発表しました。業務用エアコンを廃棄する際、フロン類を回収せずに大気中に放出したとして、事業者が摘発されました。

このように、フロン排出抑制法の違反は実際に摘発・処罰されています。「知らなかった」「うっかり忘れた」では済まされません。


事業者がすべきこと:チェックリスト

フロン排出抑制法に適切に対応するため、以下のチェックリストを活用しましょう。

使用時のチェック項目

  • 自社で使用している第一種特定製品をすべて把握している
  • 3ヶ月に1回以上の簡易点検を実施している
  • 定期点検が必要な機器について、専門家による点検を実施している
  • 点検記録簿を適切に作成・保管している
  • 漏洩を発見した場合の対応フローを社内で共有している
  • 年間漏洩量が1,000t-CO2を超える可能性がある場合、報告準備をしている

廃棄時のチェック項目

  • フロン類充塡回収業者に回収を依頼している
  • 行程管理票(引取証明書)を受領し、3年間保管している
  • 廃棄物・リサイクル業者へ引き渡す際、引取証明書の写しを交付している
  • 建物解体時、解体業者と連携して機器の有無を確認している

冷媒ガス検知システムの導入で法令遵守を確実に

フロン排出抑制法では定期点検が義務付けられていますが、人の目視だけでは微量な漏洩を見逃す可能性があります。そこで有効なのが、冷媒ガス検知システムの導入です。

冷媒ガスセンサーは、空気中のフロン類を自動的に検知し、一定濃度を超えると警報を発する装置です。24時間365日の常時監視により、漏洩の早期発見、法令違反リスクの軽減、設備停止の防止が可能になります。2022年改正により、常時監視システムは簡易点検の代替としても認められています。

新コスモス電機三菱電機押野電気など複数のメーカーが製品を提供しています。押野電気では、専門商社として設置環境に応じた最適な機器選定から施工、アフターサポートまでトータルで対応可能です。対応冷媒の種類(R22、R410A、R32など)、設置環境、集中監視の必要性などを考慮して選定しましょう。

専門家の活用も検討を

フロン排出抑制法への対応は、事業者にとって大きな負担となる場合があります。特に、以下のような課題を抱える企業は多いでしょう。

  • 社内に専門知識を持つ人材がいない
  • 複数の拠点に多数の機器があり、管理が煩雑
  • 法改正への対応が追いつかない
  • 点検記録簿の作成・保管が負担

このような場合、専門業者による外部サービスの活用を検討しましょう。定期点検や記録管理を一括で任せられる業者もあり、管理者の負担を大幅に軽減できます。

冷媒管理システム(RaMS)などのツール活用 電磁的記録による点検記録簿の作成・保管が可能なシステムも登場しています。これらを活用すれば、行程管理票の管理も効率化できます。


まとめ:フロン排出抑制法は「すべての事業者」の義務

フロン排出抑制法は、業務用エアコンや冷凍冷蔵機器を使用するすべての事業者に関係する法律です。「うちは小規模だから関係ない」ということはありません。

押さえるべきポイント

  1. 3ヶ月に1回以上の簡易点検は義務(すべての機器)
  2. 一定規模以上の機器は専門家による定期点検が必要
  3. 機器廃棄時は必ずフロン回収を依頼し、行程管理票を保管
  4. 違反すると最大50万円の罰金が即座に科される(直接罰)
  5. 2020年4月以降、廃棄時の規制が大幅に強化されている

地球環境を守るとともに、法令遵守による企業リスクの回避のためにも、フロン排出抑制法への適切な対応を徹底しましょう。

不明な点がある場合は、都道府県の担当窓口や専門業者に相談することをおすすめします。

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